【プロ家庭教師が解説】子どもの自己肯定感を育む関わり方。「自分でやりたい」を引き出す言葉の力
これまで、子どもに「勉強しなさい」と言わずにやる気を引き出す、具体的な声かけの方法について見てきました。
これらのアプローチは、実は単に勉強をさせるためだけのものではありません。その根底には、子どもの自己肯定感を育み、主体性を伸ばすという、より深く、大切な目的があります。
子育ての当事者ではない私ですが、教育の現場で日々多くの子どもたちと接する中で、声かけひとつで子どもの表情が、そして行動が、驚くほど変わる瞬間を何度も目撃してきました。
「何やってたの?」ではなく「どの教科からやってみようか?」
勉強以外のことに夢中になっている子どもを見ると、「またサボってたの?」と聞きたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、こうした詰問は子どもを委縮させ、「だって」「でも」という言い訳を引き出すだけで、建設的な会話にはつながりにくいものです。
ここで有効なのが、子どもに「選択肢」を与える声かけです。
「今日は算数と漢字、どっちから始める?」「まず5分だけやってみない?」。
このように、次に取るべき行動を具体的に、そして選択の余地を残して提案することで、子どもは「やらされる」のではなく「自分で決めた」と感じることができます。
この「自己決定感」こそが、内発的なモチベーションの鍵を握っているのです。
「どうせ無理でしょ」ではなく「あなたなら絶対できるよ」
おそらく、保護者の方が最も注意すべき言葉が、子どもの可能性を否定する一言です。
過去の失敗から、「どうせあなたには無理よ」といった言葉が、つい口をついて出てしまうことがあるかもしれません。
しかし、親からかけられる「無理」という言葉は、大人が想像する以上に深く子どもの心を傷つけ、挑戦する意欲を根こそぎ奪ってしまいます。
たとえ何度も失敗を繰り返したとしても、「大丈夫、あなたならできるよ」「ゆっくりでいいから、一緒に方法を考えてみよう」と声をかけ続けてみてください。
親が自分の可能性を信じ、待ってくれている。その安心感が、子どもにとって何よりの「やる気の土台」となります。
失敗を恐れずに再び立ち上がろうとする力は、こうした揺るぎない信頼関係の中で育まれていくのです。
最後に、プロ家庭教師としてのメッセージ
「勉強しなさい」と言いたくなるのは、お子さんを心から大切に思っている証拠です。
その愛情を、ほんの少しだけ言葉の形を変えて伝えてみませんか。
完璧にやろうとしなくても大丈夫です。今日、ひとつでも「やさしい声かけ」を試してみようと思えたなら、それはお子さんにとって、そしてご自身にとっても、間違いなく素晴らしい一歩となるはずです。
親子のコミュニケーションがより温かいものになることを、心から願っています。