【要注意】そのごほうび、逆効果かも?子どもをダメにする4つの失敗パターンと処方箋

前回の記事「子どもの勉強のやる気を引き出す『正しいごほうび』3つのルール」では、効果的なごほうびの基本をご紹介しました。

しかし、基本ルールに沿って実践しても、「なぜかうまくいかない」「ごほうびを始めてから、かえって勉強しなくなった…」というご相談をいただくことも少なくありません。

実は、ごほうびの運用にはいくつかの「落とし穴」が存在します。今回は、ごほうびが逆効果になってしまう典型的な失敗パターンと、それぞれの状況に合わせた具体的な対処法(処方箋)を解説します。


あなたは大丈夫?ごほうびが逆効果になる4つの落とし穴

お子様の様子と照らし合わせながら、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

ケース1:「ありがとう」がない…ごほうびが“当たり前”になった

最もよくあるのがこのケースです。最初は喜んでいたごほうびも、毎日続くと子どもは慣れてしまい、喜びや感謝が薄れてしまいます。

やがて「勉強したら、ごほうびがもらえて当然」という権利意識に変わり、もらえないと不満を口にしたり、やる気を失ったりします。

ケース2:「どうせ無理」と諦める…目標設定が高すぎる・低すぎる

ごほうびが機能しない大きな原因が、目標設定のミスマッチです。普段30分しか集中できない子に「2時間勉強したら」という高すぎる目標は挫折のもと。

逆に簡単すぎる目標では、達成感や成長実感が得られません。

ケース3:「ごほうびのため」が目的化し、勉強が嫌いになる

「このゲームのために、今日の勉強を終わらせよう」――。

ごほうびへの意識が強すぎると、勉強は「ごほうびを得るための苦痛な作業」になってしまいます。

これでは、新しいことを知る楽しさや、問題が解けた時の達成感といった、勉強本来の喜び(=内発的動機づけ)が育ちません。

ケース4:「お兄ちゃんだけずるい!」兄弟間の不公平感

兄弟姉妹がいるご家庭では特に注意が必要です。年齢や能力が違うのに同じごほうびを与えたり、一人だけが頻繁にごほうびをもらったりする状況は、「ずるい」「不公平だ」という不満や嫉妬を生み、家庭内のトラブルに発展することもあります。


【ケース別】今日からできる!やる気を取り戻すための処方箋

もし落とし穴にハマってしまっても、大丈夫。軌道修正するための具体的な対処法をご紹介します。

対処法1:“当たり前”を防ぐ「マンネリ解消」テクニック

ごほうびの価値を保つには「予測できない」要素が効果的です。

  • ごほうびガチャ: いくつかのごほうび候補を書いた紙を用意し、くじ引き形式にする。
  • ポイント制の導入: 「宿題完了で1P」「音読で1P」のように頑張りをポイント化し、「10P貯まったら好きなお菓子」など、少し先の楽しみに変える。
  • 戦略的に“お休み”する: 時にはごほうびをお休みする日を作り、「いつももらえる訳ではない」と認識させる。

対処法2:自信を育む「スモールステップ」目標の立て方

目標設定のコツは「今の実力より、ほんの少しだけ難しい」レベルにすることです。

  • 具体例
    普段30分しか集中できない子なら、まず「35分頑張ってみよう」と声をかける。クリアできたら「すごい!次は40分に挑戦できるかも?」と、子どもの自信を確認しながら少しずつレベルを上げていきます。

対処法3:勉強の楽しさを伝える「魔法の声かけ」

ごほうびを渡すだけでなく、勉強のプロセスや成果そのものを褒める声かけを意識しましょう。

  • 声かけ例: 「難しい問題が解けて、スッキリしたね!」「この漢字、昨日よりずっと上手になったね!」「この本を読んだら、新しいことがたくさんわかったね!」

対処法4:兄弟みんなが納得する「個別オーダーメイドルール」

兄弟間でのトラブルを防ぐには、公平性より「個別最適」が重要です。

  • 目標とごほうびは、必ず子ども一人ひとりと個別に話し合って決める。
  • 「お兄ちゃんはテスト勉強だから、あなたは漢字練習を頑張ろうね」と、それぞれの目標が違うことを伝える。
  • 兄弟間で比較するような言葉(「お姉ちゃんはできたのに」など)は絶対に避け、それぞれの成長を褒める。

まとめ:ごほうびは万能薬ではない。子どもの自立への「橋渡し」

ごほうびは、子どものやる気を引き出す有効なきっかけになりますが、万能薬ではありません。使い方を間違えれば、逆効果にもなり得ます。

大切なのは、ごほうびに頼りすぎず、子どもの様子をよく観察しながら柔軟に目標やルールを調整していくことです。

最終的なゴールは、ごほうびがなくても子どもが自ら学ぶ意欲を持つこと。ごほうびは、そのゴールにたどり着くまでの「橋渡し役」として賢く活用していきましょう。

次回はいよいよ最終回。ごほうびから上手に卒業し、子どもの「自律的な学習意欲」を育てるための具体的なステップについてお話しします。